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チチ、と虚圏にはない音が窓から聞こえる。
うっすらと瞼を開けると、これまた虚圏にはない本物の太陽の光が窓の外に広がっていた。
腕の中には、太陽ですら白く染める事のできなかった夜色がぐっすり眠っている。
いつの間に抱き合っていたのか覚えていないが、夢見は悪くなかった、と思う。
そういや、コイツと過ごすようになってから、食うや食われるの夢はあまり見てねぇ気がする。
寝ても覚めても、壊すことか殺すことかしか考えてなかった俺が。
えらく変わっちまった。
魂にしっかり空いちまった孔はどうやったってふさがりっこねぇが、その分いくらだって夜色を詰め込めるんだぜ。
…なんて言ったら、コイツは笑うな。
くそ、癪だからぜってぇ言ってやんねぇ。
さぁて、夜もすっかり明けちまったことだし、これからどうすっかな。
虚圏に戻ったってヒマでしゃあないんだし、コイツが起きたらどっか行こうって誘ってやるか。
青い空の下へ。
end
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