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「ルキア。声が、聞きてぇ」 何言ってんだ、俺は。 ヤバいって思ってた端からこれだ。 俺らしくもねぇ。 鳴かせたいなら、強引にでも壊れるくらいにヤっちまえばいいのによ。 ゆるりと持ち上げられた白い手が俺の髪にかかる。 するすると撫でられていると、胸の奥の方が温かくなるようで。 無理矢理にでも、って気がどっか行っちまう。 「…ルキア」 あぁ、馬鹿みたいに情けねぇ声。 こいつといると微温い感情に満たされちまって、俺が俺でなくなっちまうような。 ぐらぐら揺れる地面に立ってるみたいで、無性に不安になる。 「しょうのない……これで、我慢しておけ…」」   ルキアが、俺の髪を撫でていた腕を首筋に回してきた。 かけられた言葉の意味に疑問符を浮かべていると、不意に頭を引き下ろされる。 力では俺が圧倒的に勝っているはずなのに、抵抗する気もおこらず、いともあっさりされるがまま。 小さな体を潰さないようとっさに肘を付き、倒れ込むのだけはなんとか堪えた。 深い夜色の髪が目の前でさらさらと揺れる。 ――何しやがる。 問いかけようとしたが、俺の頭を抱えたルキアの方が早かった。 「動け、馬鹿猫」 ごく短い宣告が、間近から俺の耳に滑り込んでくる。 小さな小さな一言。 けれどその音ははっきりと伝わった。 俺だけに。 偉そうな命令口調だが、声が聞きたいと言った俺を拒絶しやしなかった。 それがどうにも嬉しくて。 思わず頬が緩む。 ついでに目頭まで妙に熱くなる。 多分情けねぇ顔してるんだろうが、首筋に埋めてるおかげで互いに顔が見えなくなってるのが救いだ。 これ以上浸ってるとマジで大変な事になりそうだったので、誤魔化すように律動を再開した。 「あん…っ…」 耳元から脳ミソに直接突っ込まれるようなルキアの甘い声に、俺の頭ン中はじんじん痺れてる。 もう、おかしくなっちまってんだろうな。 側にいるだけで、ぽっかり空いちまった所が微温いモンで埋められてくなんてよ。 二度も本気で壊してやろうとしたコイツが、今は愛しくて愛しくてたまらない。 「ルキア…っ」 俺だけのために鳴くコイツに、ずぶすぶ溺れてく。 闇夜の色に魅入られて、俺は何度も何度も小さな身体を抱いた。
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