2人が本棚に入れています
本棚に追加
「私は世界をずっと見てきました。世界の行く道を。帰蝶も見なさい」
帰蝶の母・市姫(イチヒメ)はその女神のような清楚で神秘的な美しさから考えられないが世界放浪を一人でしてきた女性。小さい頃、帰蝶は市姫に連れられその放浪の旅に付いてきた。
だがある日、市姫は言った。
「しばらくは一人で行きなさい。私の導きだけじゃなく自身の足で歩きなさい。それが出来れば、帰蝶は一人前です」
「お母さん、一人前って?」
「………いずれわかるわ。その時は私に会いに来るのですよ。帰蝶」
市姫は一度帰蝶をある日本の寺に預け帰蝶の前から去っていった。
帰蝶は“一人前”の意味を知らない。
そして現在、帰蝶は母が居るかもしれないと察した山を走っていた。
「母ちゃん元気かなぁ。いつも白くて目立つ装いだからすぐ解るだろうし」
帰蝶は走るのを止め辺りを見回す。
「貴女は………?」
「えっ?」
何処かから女性的な声がした。
「誰だよ?」
帰蝶は声のする先を見ようするが声の主の姿は見えない。
最初のコメントを投稿しよう!