優しい色に包まれて

2/6
46人が本棚に入れています
本棚に追加
/196ページ
応えがないのを分かっていて話しかけるのは、もう長くなる。 「紫苑。 俺は、起きてるのにお前が寝てるっておかしいくないか。 普通、逆だろ? 紫苑が俺を起こしてくれるんじゃなかったのかよっ…」 俺は起きてるのに、紫苑がこのままなんてことはあっちゃいけない。 遅刻しそうになったら起こしてくれるんじゃなかったのか? 紫苑がいないから、俺は自分で起きないといけなくなったんだぞ。 なぁ…また起こしにきてくれよ 毎日自分で起きるの大変なんだ それに… 「言わなきゃいけないこと… 俺、まだ紫苑に言えてないんだ 今まで、ずっと先延ばしにしてたけどさ。 生きてたら、どんなことがあるか分からないって今回の事で分かったから。 今度はちゃんと言うよ。 俺がずっと、紫苑にも秘密にしてたことだ。 知りたくないか? 知りたいだろ? 早く起きろよ。 そしたら教えてやるから…」 死んだように動かなくても、この握った手には確かに血が通っていて暖かい。 それだけが紫苑が生きている証
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!