ニンジン

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「お前、どうかしてるよ」  首筋をスッと撫でられた。  その感触の気持ち悪さにあたしは身をすくめ、振り向いて手を払う。  茶髪にピアス。少し長めの細く柔らかい髪に整った顔立ち。  城ヶ崎和樹はあたしに向かって呆れたような表情を浮かべている。  詰め襟の学ランの前を開けて、赤いTシャツを見せている彼。特別仲がいいわけでもない城ヶ崎の行動に、戸惑うあたし。 「なんで別れないの?」  それがなんの話か分からなかったあたしは、訝しげに彼を見る。  やや遅れて首の痣と結びついた発想からくる言葉だと察し、あたしは少し気分をよくした。  先生が私にくれたこの痣が、だれかの意識を引きつけることで、先生の行為を思い出させてくれる。  いつでも鮮やかに、網膜に焼きついた記憶の中で先生が躍動する。 「相馬ってそういう趣味があるの?」  小首を傾げて、城ヶ崎は尋ねた。  あたしは少し考えて、答えた。 「好きだから」  嘘ではないし。 「いいの」  ホントだし。  
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