5人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前、どうかしてるよ」
首筋をスッと撫でられた。
その感触の気持ち悪さにあたしは身をすくめ、振り向いて手を払う。
茶髪にピアス。少し長めの細く柔らかい髪に整った顔立ち。
城ヶ崎和樹はあたしに向かって呆れたような表情を浮かべている。
詰め襟の学ランの前を開けて、赤いTシャツを見せている彼。特別仲がいいわけでもない城ヶ崎の行動に、戸惑うあたし。
「なんで別れないの?」
それがなんの話か分からなかったあたしは、訝しげに彼を見る。
やや遅れて首の痣と結びついた発想からくる言葉だと察し、あたしは少し気分をよくした。
先生が私にくれたこの痣が、だれかの意識を引きつけることで、先生の行為を思い出させてくれる。
いつでも鮮やかに、網膜に焼きついた記憶の中で先生が躍動する。
「相馬ってそういう趣味があるの?」
小首を傾げて、城ヶ崎は尋ねた。
あたしは少し考えて、答えた。
「好きだから」
嘘ではないし。
「いいの」
ホントだし。
最初のコメントを投稿しよう!