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城ヶ崎の表情が、乾いた。
妙な表現だけど、それが一番ぴったりくる。
乾いた彼が、あたしに言ったのは。
「濁ってんだな」
「なにが?」
「目玉が」
瞬間。
城ヶ崎の顔が近づき。
瞳に走る、異物が侵入する感触。
右目がふさがれて、
片目が闇に堕ちる。
残された瞳が答えを捉え、
先生でいっぱいのあたしの脳が解を出した。
眼球を、舐められたのだ。
キャーッという黄色い女子の歓声も、どよめきのようなくぐもった男子の呻きも、しっかり聞こえた。
遠目からだと、瞼にキスしたように見えたかもしれない。
城ヶ崎と眼があう。
微笑が浮かんでいる。
息がかかるほど近くにある、
その瞳が濡れる。
挑発的な輝きを、
静かに放っている。
あまいあまい誘いの、
そのあまさを振り切れるほど。
あたしは先生が好きだ。
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