5人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
突き刺すような青が痛くて眼を瞑った。
校舎の屋上は緑のフェンスに囲まれている。
――ここは牢獄だ。
「おまえ、佐倉と付き合ってんのか?」
壊れものを扱うような慎重な口調で城ヶ崎が聞く。
その質問の鋭いスプーンはあたしの胸を抉った。
「ううん」
こそげとられた脂肪の隙間に銀の針が埋め込まれる。
生暖かい血があたしの内側でワインのような紅さを誇っている。
校舎は冷たく佇み、城ヶ崎は透明な存在に思えた。
「……おまえ」
――言わないで。
――お願い、城ヶ崎。
「佐倉のことが好きなのか?」
鳥が空を横切った。
ああ、翼があれば、あたしが登ってゆけるのに。
唇から声が漏れた。
「うん」
上昇気流が逃げていく。
もう高くは飛べないのね。
張りぼてでもいいから、翼をこしらえたら天使にでもなれるかな?
だけど眠るとき、きっと邪魔だな。
あたしは先生から剥がされて、城ヶ崎と一緒にフェンスにもたれている。
あの三匹の蛾はまだ先生と一緒にいるのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!