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雲一つない空。
遥か地上では草木が葉を繁らせて揺れている。
緑が沸き立つ。
光を食べて、
雨露を飲み干して、
滑るように
蔦を伸ばした蔓草は
あたしの足に絡みついている。
城ヶ崎は今日も赤いTシャツを学ランの中に着ていた。
あたしは彼の柔らかな髪が日に透けて赤く燃えるのをぼんやりと眺めていた。
どこにも行けないあたしと、どこかに行きたいあたしと、どこへ行けばいいのか分からないあたしが三つ編みで編まれている。
風が空気に染まって透明な時間がやって来る。
彼はそれを拒むかのように、口を開いた。
「いつから?」
あたしは分かっているのに分からない振りで城ヶ崎に顔を向けた。
だけどそんなのは刹那しか時間を稼げない。
「いつから好きなんだ? 佐倉のこと」
瞳が真っ直ぐあたしを捉えている。
まるで微細な表情の変化を読み取ろうとするかのように、城ヶ崎はあたしを視線で捉えて離さなかった。
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