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月光の中、一機の鉄巨神が木の生い茂る森の中を走り抜けていた。
「まさか、襲撃と共に軍から裏切りが出るとは予想外だったわ。」
鉄巨神の操縦席の中で少女は呟いていた。
「王国の剣である私が不意を突かれるとは……あの野、」
少女は自分が下品な言葉を使いそうになったので慌てて口をつぐむ。
まさか自分が引き連れていた大半の兵士達が、突然槍や銃を突き付けてきたときの光景を何度も思い返すたんびに少女の中の怒りの焔が燃えたぎる。
裏切り者の指導者といえば、物分かりもいいし優男だからある程度ほど、信頼していた部下だった。
それだから、悔しいのだ。
よりによって自分の部下が、王国に忠誠を誓った自分の部下が敵と手を結び、反逆するとは。
「思い出すだけで………はぁ。」
今はそんなことを考えても仕方がない。
「どうやら来たみたいね。」
いつの間に接近したのか、少女の鉄巨神の周囲を、敵の量産型鉄巨神アルタイルが数機、気配を潜めるようにして走っていた。
左右を見回し、視界に六機の姿を確認した。
「私の機体、パールヴァティに勝負を挑むつもりかしら。」
少女は両足のペダルに力を込める。
パールヴァティの走る速度が更に上がり、横にいた敵機の位置がたちまち後ろに下がっていく。
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