第一章

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俺は隣国エミネムでの紛争から祖国に帰るバノンの供として、王都の横にそびえる山で夜となったので野営しているのだった。 実際は戦場に向かったはいいが現場ではすでに決着がついていて仕方なく帰ってきたんだけどな。 俺が天幕から出た時、足を運ぶまでもなく、喧騒の正体はすぐに知れた。 「敵襲!!」 「正体不明な部隊が襲って来たぞッ!?」 悲鳴にも似た叫び声が聞こえてきて、俺がいた周辺一帯もたちまちのうちに騒乱の中に叩き込まれるはめになった。 「て、敵襲だと……バカな、ここは王都の横にある山だぞ?」 バノンが天幕から慌てた様子で飛び出してきた。 「ゼノ!すぐに出る。手伝え!!」 そう俺に向かって命じるなり、バノンは天幕の裏に置かれていた巨大な物体に走り寄り、全面の扉を開けて中へと飛び込んだ。 「早くしろ!!」 バノンに怒鳴られ、俺は慌ててその巨大な物体のそばへと走って行くとバノンが開けた扉を外側から閉め、バノンの姿を隠した。 ヴィィ……………ン 機械音が聞こえたかと思った途端、巨大な物体が小刻みな振動を開始する。 「おっと、」 俺が飛び退くと、それは動き出したのはほぼ同時だった。
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