4人が本棚に入れています
本棚に追加
俺の前で、その巨大な物体は大地を踏みしめるように立ち上がった。
それは異形だったといえよう。
二本の足と二本の腕、頭部の持つさまは人間とよく似ているが、身の丈は優に倍を超える。
全身を金属の装甲で覆われていた。
内側には人でいう筋肉と血液の代わりに無数の精密な部品の組み合わせからなる精巧な機械式の機構が詰まっており、胴体にあたる部分に乗り込んだ操縦者の意思に応じ稼働する仕組みとなっている。
機械で出来た巨人兵。
それが俺の前にいる異形、鉄巨神の正体だった。
改めて周囲を見渡して見ると今は夜のはずだが、空高くに満月が煌々と輝き、柔らかな光が山を照らしているため視界はそう悪くはない。
天幕と木々の間に他にも何機か鉄巨神の姿が見え、それらのほとんどが、バノンの乗る機体と同じように立ち上がっていた。
そのうちの一機が、突然激しい音を発し、その場で爆発した。
『なっ何!?』
驚いたバノンの声が、機体に装備された拡声器に増幅され、外にいる俺の耳にも聞こえてくる。
「いったい何が……」
俺は爆発した鉄巨神に向かって目を凝らす。
「ッ!!」
そして気付いた。
破損した機体のすぐ傍らに、両手に鉄爪を構えた別の鉄巨神が、闇に溶け込むように立っているのを。
最初のコメントを投稿しよう!