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それどころか俺は、不意に目の前で始まった鉄巨神の戦闘、すさまじく苛烈な空気に、ただ圧倒されていた。
俺にとって戦場に出るのも、生で鉄巨神が戦うところを見るのも、初めての経験だったからである。
敵の鉄巨神はバノンが腕がたつ技術士とわかると、すぐにバノンから身を引いて後ろに跳躍する。
『逃がすか!』
バノンが追いかけようとしたその時、敵の機体が装備していた左手の鉄爪が火を噴いて飛び出し、バノンの機体の脚に着弾した。
『なっ!?』
驚いたようなバノンの声が聞こえる。
足の機動性を失い彼の機体が仰向けにひっくり返った。
敵の鉄巨神は生じた隙を逃さず、素早く走り込んでバノンの機体の操縦席の部分を足で踏みつけ、右手に残った鉄爪を頭上高く振り上げ、バノンの機体の頭部に向かって降り下ろす。
何かが切り裂かれ、破壊される鈍い音が響き渡った。
バノンの機体は、まったく動かなくなった。
全てが一瞬の出来事だった。
「あ………」
一部始終を目にした俺は、なおもバノンの乗っていた機体を足で踏みつけたままその場に立つ敵の鉄巨神を見上げていた。
――バノンが強いかは知らないが、こいつの実力はかなりのもの……だな。
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