藍色の霧とラグール村

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「……それは嫌」  マヤはほんの少しだけ顔を歪め、首を振った。それと同時に、頭頂部に生えた白い三角の耳も霧から逃げるようにペタンと頭に貼り付く。それがとても愛おしくて、そしていじらしかった。 「それよりも」  まるでこの話の続きをしたくない、とでも言うようにマヤは話題を変えた。ひょっとしたら、この話をしていたら染まってしまうとでも思ったのだろうか。 「わたし達、ラグール村に着けるの?」 「さぁね」  現状、霧に視界が遮られ進むべき方向が分からない。一応足元に道らしきものがぼんやりと見えているが、それは頼りない綱のようなものだ。ひょっとしたら気がつかぬ間に獣道へと踏み入ってしまうかもしれない。そうなれば、直下の目標であったラグール村に辿り着くということも難しくなってしまうだろう。  せめてこの霧が晴れてくれれば良いのだが。霧というものは得てして朝だけに出ていることが多いので、しばらく待っていれば晴れるかもしれないだろう。だが、ここは村の中などではない草原の中の道。つまり、”外”なのだ。何かしらの獣が襲ってきてもおかしくないだろう。  とは言っても、どうしようもないのもまた現実。結局立ち往生していると、不意に僕の耳に何か音が聞こえてきた。
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