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ダンっとボールが床を跳ねる。けれど、そのボールは彼の手に吸い着くように戻ってくる。
ゆっくりなモーションからクイック。沢村の横をすりぬけようとするけれど当然ブロックされて、だからその速さのまま逆方向へ。
沢村が一瞬遅れた隙をついてカットイン、そのままシュート。
放られたボールはゴールに嫌われることなくネットをすり抜けていった。
特別、凄いパフォーマンスを見せる訳じゃない。
けれとスマートな彼のプレーに誰もが目を奪われてしまう。
そして、
「終了だ。5対2で鳴海君だな」
コーチの声に彼のシューズ音が止んだ。
「これでお終い?」
ニコリと笑う凌の声に沢村の顔がピクリと引きつる。
「俺もちょっとやったみたいかな?」
へらっと笑って手を挙げたのは深いえくぼを頬に刻んだ誰か。
「お前ね、相手はまだ大学生なりたてのホヤホヤで」
「いいですよ」
コーチの言葉を遮ったのは爽やかな笑みを湛えた彼で、
「そんじゃ、お願いしまーす!」
と、えくぼの彼がボールを凌に向かって投げてきた。
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