君伝3…4章 キスで繋いで

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ダンっとボールが床を跳ねる。けれど、そのボールは彼の手に吸い着くように戻ってくる。 ゆっくりなモーションからクイック。沢村の横をすりぬけようとするけれど当然ブロックされて、だからその速さのまま逆方向へ。 沢村が一瞬遅れた隙をついてカットイン、そのままシュート。 放られたボールはゴールに嫌われることなくネットをすり抜けていった。 特別、凄いパフォーマンスを見せる訳じゃない。 けれとスマートな彼のプレーに誰もが目を奪われてしまう。 そして、 「終了だ。5対2で鳴海君だな」 コーチの声に彼のシューズ音が止んだ。 「これでお終い?」 ニコリと笑う凌の声に沢村の顔がピクリと引きつる。 「俺もちょっとやったみたいかな?」 へらっと笑って手を挙げたのは深いえくぼを頬に刻んだ誰か。 「お前ね、相手はまだ大学生なりたてのホヤホヤで」 「いいですよ」 コーチの言葉を遮ったのは爽やかな笑みを湛えた彼で、 「そんじゃ、お願いしまーす!」 と、えくぼの彼がボールを凌に向かって投げてきた。
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