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通されたのは監督のいる部屋で、
「本当によく来てくれたね。君というカンフル剤で今日の練習はかなりレベルが高くなった」
河本監督は簡素な椅子に腰掛けて満足そうに「フォフォフォ」と琢磨が聞いたら喜びそうな声で笑う。
「実際、君をこのアジア選手権から使いたいのだげどね」
「選手登録するには遅い、ですよね」
さらりとそう答える凌に監督はまた「フォフォフォ」と笑った。
「だけど、次から君を使いたいのは事実だよ。前の時、君が断らなかったら――」
「日本のバスケにはあまり興味なかったので、すみません」
悪びれない彼に一瞬呆気にとられたものの、やはり監督は「フォフォフォ」と笑う。
「素直な子だね。でも、それを君の手で変えたらどうかな?」
「え?」
「これから日本の子供達がバスケに憧れるような世界を一緒に作らないか? という話だよ」
「……僕は僕が楽しめたらいいんで」
「うんうん、それが一番大事だね。その延長にそんな目標があったら素敵だろう? どっちにしても8月の選手権が終わってからは正式によろしく頼むよ」
「……」
「あ、勿論、こっちにいる間は練習に参加して欲しいな。みんなの緊張感が違うから」
そう言って差し出される手を眺めていたら、
「ね?」
河本監督ににっこりわらわれて、凌の右手が握られた。
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