死の星

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 車で行くのは、相手を刺激しかねないので、団長を含めた数名が徒歩で移動して調査するこになる。残りの団員は、周囲の調査や宇宙船に残り、整備点検といつでも出発できるように準備を整えさせておく。  小高い丘を出発して一キロ、気付かれないように光学迷彩を施しているとはいえ、いつ、星の住民に見つかるか彼らはヒヤヒヤしていた。やがて、集落が目視できるほどの場所まで到着すると、物陰に隠れて双眼鏡を使い集落を覗き見た。 「どうも、おかしいですね」  双眼鏡を覗いてた団員が言った。団長も別の双眼鏡で覗いていたが、彼と同じように、おかしいと思った。 「確かにそうだな。昼間だというのに、人っ子一人いないとは・・・」  集落を見るも、昼間だというのに誰もいない。あまりにも、静かすぎた。 「寝ているのでしょうか?」 「可能性はあるな。必ず、昼間行動する生命体がいるとは限らない。住民全員が、夜行性の生き物なのかもしれない」  どんな生命体がいるのかは不明であるが、民家を建てられるほどならば、それなりの知性を持っているはず。もし、本当に寝ているのならいい。集団で、どこかに出掛けているのならば、尚のこと、好都合だ。  誰にも気付かれない内に生活の状況を確認できるから。  調査団は物音を立てないよう、静かに集落に近付くと、建物の影から井戸らしきモノがある場所を見る。  人の気配はない。 「団長。やはり、何かおかしいですよ」  団員が不安げに言葉を口にした。宇宙服や宇宙船は光学迷彩処理、つまり、目には見えない特別な加工を施されている。相手を刺激しない為だ。  しかし、宇宙船が着陸した時の音。それだけは、ごまかしのしようがない。確認できなくとも、住民が姿を現して騒いでいてもおかしくなかった。なのに、未だ、反応はない。  宇宙船の着陸の音を聞いて避難でもしたのだろうか。それとも、何か別の理由があるのか。  調査団の間に不穏な空気が流れた。誰かが口にしなくても、嫌な予感が頭の片隅に生まれようとしていた。
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