第2話

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翌朝、烏は小さくため息をついた。 また、だ。 「腰いった…。」 おそらく昨夜の情事が原因だろうが。 烏は起き上がれない程の痛みに悶絶しながら、布団の中で気崩れた着物を気直す。 「……烏兄さん、昼食ができてます。食堂にいらっしゃいますか?」 「………持ってきて。」 廊下から聞こえた春菜の声に力なく答え、烏は身体から力を抜いた。 あぁ、湯浴びしたい。 汗と体液でベトベトになった身体は、予想以上に気持ち悪かった。 でも、そんな体力は今の自分には残っていない。 「烏兄さん、入りますよ?」 「あ、うん。」 襖を開けた春菜の顔が歪められ、それから寝たままの烏を見て、呆れたように苦笑する。 「…また、ですか。」 「ごめん…。」 春菜は持ってきた昼食を畳に置くと、烏の背中を支えながら起き上がらせた。 春菜の栗色の髪が首筋を擽って、僅かに首を竦める。 「ほら、冷めないうちに食べろ、だそうですよ。」 「あー、いっつも熱いのは苦手だって言ってるのに…。耕吉さんは意地悪なんだから…。」 耕吉とは、ここの裏郭の食事を一手に引き受ける凄腕の料理人だ。 本人曰く、そこらの料亭、なんかよりは旨いものが作れるそうだ。 「兄さんが冷え性だからって考えてくれてるんですよ。ほら、しっかり食べて下さい。」 「はーい…。」 知ってる。 耕吉はまるで兄のように優しく、烏のことを気にかけている。 江戸っ子気質なのか、気前がよく男前なところがある反面、美しい料理を作る繊細な感性も持ち合わせている。 そんな耕吉は、烏がいつも寒い寒いと言っているのを事の外気にしていた。 .
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