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部屋に入ると、きちんと整えられた布団が目に入り、烏は迷わず布団に寝転ぶ。
きっと天日干しされたのだろう、暖かい匂いが鼻孔を擽った。
「…兄さん、入るよ。」
「あぁ、いいよ。おいで。」
廊下から聞こえた声に、快く承諾の返事をして、烏はまた布団に顔を埋めた。
「まーた着物そのままで寝てるー。皺になったの直すの、俺なんですよ?」
「皺にならないように寝てるよ、ほら。なってないだろ?」
入室してきた夏輝の早速の小言に、烏は淡く微笑んで首を傾げる。
そんな烏にため息をついて、夏輝は烏の寝ている布団に腰掛けた。
「烏兄さんってさ、なんでいっつもそんなに無気力なの。」
「……なんでだろ。」
夏輝は否定しないばかりか、心底分からないと言った風に首を傾げる烏に、苦笑を漏らす。
そして、寝転がる烏の髪を指に絡めて、ため息をついた。
「髪濡れてる。風邪引いちゃうよ?兄さん。」
「あー…。夏輝、拭いて?」
「もう…。しょうがないなぁ。」
夏輝は悪戯に微笑む烏に苦笑で返しつつも、烏の肩から髪を拭くための布を取る。
これは、烏のことを贔屓にしている客から送られた、たおるけっと、というものだそうだ。
触り心地が柔らかで肌に優しいのだと、いつだか烏が言っていた。
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