412人が本棚に入れています
本棚に追加
「……兄さんってさ。」
「ん?どうした?」
「可愛いよね、ほんと…。」
「ははっ。当たり前だろ?だって俺は烏だぞっ」
夏輝は思わず目を細めた。
他の者に言えば、たちまち相手を赤面させてしまうような言葉も、烏には効き目がない。
そればかりか、それがさも当然のことであるかのような言い方で返されて、いつもこちらが困ってしまう。
この烏という自分と大して年の変わらない少年が、夏輝には時折、驚くほど眩しく、そして霞んで見えた。
消えていってしまいそうなのだ、光の中に。
光に溶けて、跡形も無くなってしまうような、そんな印象を受ける烏という存在に、夏輝は魅了され続けた。
「……なぁ、夏輝?」
「ん?なに?」
「……夏輝は、俺と違って格好いいよ?」
その言葉に、夏輝は瞠目する。
いきなり何を言い出すかと思えば、そんなことか。
わざわざそう伝えてきたのには、きっと意味かあるんだろう。
この人は悟い人だ。
何かを感じ取る感覚だけは、誰よりも研ぎ澄まされている。
だから注意せよと、店主である銀二からは言われていた。
でも、それでも。
「…ありがとう、兄さん。」
光と共に消えてしまいそうな、そんな烏を、夏輝は好かずにはいられなかった。
最初のコメントを投稿しよう!