第2話

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「あーあ。また眠くなってきちゃった。」 「さっきまで寝てたんでしょ?春菜から聞いてるよ?」 「えー…。だめ?」 「だーめ。俺はね、兄さん。お客達みたいに兄さんの笑顔に釣られたりしないからね?」 言い含めるように夏輝は言った。 そんな夏輝の言葉に頬を膨らます烏を見て、夏輝は釣られそうになる。 たしかに、夏輝は笑顔に釣られたりはしない。 でも夏輝は、烏の不満気な顔や、寝起きの顔など、自分にしか見せない顔が好きだった。 だからこそ、夏輝は意地悪をしたり、そういう顔を引き出そうとする。 「…夏輝の意地悪~」 「なんとでも。」 「わからずやっ」 「はいはい。」 「………もういいもん分かったもん。起きますよーだ。」 拗ねて、いじけて、可愛らしくそっぽを向いて。 烏は立ち上がって文机に向かった。 そんな烏に、夏輝は話しかける。 「日記?」 「うん。銀二さんに書けって言われてるからさ。」 銀二がこの人を拾ったのだと聞いている。 捨て子など、別段珍しくもないけれど。 夏輝は、烏の髪に目をやった。 烏というには、あまりに眩しすぎる白髪。 きめ細かい白磁の肌。異人との混血なのかと勘繰りたくなるが、その面はどう見ても日ノ本の人間。 瞳は漆のような黒。 雫が溜まってしまうのではないかと言うくらい、長い睫毛。 白すぎる肌には毒が強いような、艶やかな朱の唇。 瞳を裂くような痛々しい傷は、むしろ彼の華のような気さえしてくる。 そんな見目麗しい彼を、いったい何処の誰が捨てたのか。 自分なら、決して離さないのに。 腕を開け放しはするけれど、きっと歩き出したら、すぐにその腕を引いて己の囲いの中に連れ戻す。 絶対に、捨てたりはしない。 「…見つめても、何にも出ないよ?」 そんな夏輝の視線に気付いたのか、烏は擽ったそうに首を竦めて背後の夏輝に言った。 .
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