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ここは、江戸の世に幕府公認で作られた花街である。
将軍が衆道だったからや、世の中の衆道の人数がいきなり上昇したからなどと定かでない憶測が飛び交うが、結果だけ言えば、幕府は男と男の身体だけの付き合いを認め、あまつさえ、そのための花街まで作ってしまったということだ。
その街を裏郭と呼ぶようになったのは、いったい何時の世の誰だったか…。
全てが定かでない偽りのこの夜の世界に、齢19歳にして足を踏み入れた少年がいた。
それが、烏。
齢19歳で入郭して、今年で3年目。
21歳にして小姓を持つ立派な芸子である。
“床上手の不幸鳥”
と同じ職種の者に野次られることも度々あるが、本人はむしろそれを誇りとしている。
そんな烏はお得意の接待を終わらせ、自室に戻っていた。
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