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「………烏、入るぞ。」
「あ、はい。」
そんな烏に部屋の外から声をかけた男は、部屋に入るなり烏の目の前に腰を下ろした。
白地に深緑の玉模様の着物を着た大柄なこの色男は、この店【白詰】の主である。
「銀二さん…。何か用ですか?」
「いや?特にはねぇよ?」
「じゃあ、なんでいらしたんですか?」
烏は首を傾げつつ尋ねる。
その仕草に思わず目を奪われたが、銀二はそれを紛らわすように煙管を吸った。
「………銀二さん、俺を見張ってるんですか?」
「…………いや、違う。」
「嘘。顔に書いてありますよ。」
そう言って、烏は仄かに笑う。
そういえばこの子は聡いのだと思い、銀二は思わず苦笑した。
「見張ってるんじゃなく、心配してるんだよ。だって…」
「お前は今も昔もよく分からないから?」
銀二の言葉を烏が奪い、悪戯に微笑む。
こんな顔も可愛らしく見えるのだから、この子は罪な子である。
「…烏、こっちへおいで。」
銀二は胡座をかいた自分の膝を数度叩いて、唐突に烏を呼んだ。
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