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烏は立ち上がり、銀二の膝の上に座る。
そんな烏を後ろから抱き込むように腕を回す銀二は、烏の首もとに顔を埋めた。
擽ったそうに身を捩る烏をますます深く抱き込み、銀二は笑う。
「お前、相変わらず軽いな。しっかり飯を食べてるのか?」
「食べてますよ。食べても増えない体質なんです、俺。」
「そうかぁ?…あ、これは…。」
何かを見つけたのか、銀二は藍色の着流しを少しはだけさせると、一点を見つめた。
そこにあったのは、白い肌によく映える赤い跡。
「また桂さんか?」
「…そうだと思います。」
あの人は朱を散らすのが好きだ。
店に来れば烏のことを座敷に呼び、朝までの時間を共に過ごす。
交わる日もあれば、交わらない日もある。
烏は、そんな桂との時間を思いの外好んでいた。
「しっかり言っておけよ。お前の白い肌が赤くなっちまってからじゃ遅いからな。」
「ははっ…。大丈夫ですよ、その点は配慮して頂いてますんで。」
「だといいが。じゃあ、ほら。邪魔したな、よくおやすみ。」
そう言うと、銀二は着流しを簡単に直し、部屋を出ていった。
烏の頬に甘い口付けを残して
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