第2話

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それから布団に横たわり、しばらく目を瞑っていた烏が、唐突に目を見開いた。 その瞳は銀色に輝き、奇怪な銀髪と同色の瞳は、足音の聞こえる廊下側の襖を見つめる。 「……。」 「よう、不孝鳥。また来てやったぞ。」 闇に溶けた気配がするりと部屋に入り込み、烏の頬を冷たい指先がなぞる。 「……呼べ、烏。俺の名を。」 「誰が、あんたの名なんか…。」 「ふっ…。まぁ、いずれお前は泣いて俺を求めることになる。その時までの辛抱だな。」 その言葉と同時に男に布団に押し倒された。 低い声が鼓膜を揺らし、肌が粟立つ。 何かを囁かれる度に、意味を成さない言葉が吐息と共に漏れ、それすらも烏を興奮させた。 「ははっ、いい反応じゃねぇか。ぞくぞくするぜ…っ」 「…っ、やめっ、んなとこ、触るな…っ」 「言う割に濡れてるけどな、お前のここは。」 そう言っていやらしく触れてくる男の指が僅かに熱を持っていて、あぁ自分で感じているのだと思うと、自然と大胆になってくる。 いやらしく腰を振り、男からの刺激を享受して。 さして堪えることなく自身を解き放つ。 「俺が欲しいと言え、烏。そうすれば、すぐにでもくれてやる。」 「…っ、あんたが、ほし…っ。も、はやく…っ。」 「名を、呼べ。その喉で紡げ、俺の音を。」 そんなことを言われても、烏にはそれが出来なかった。 言葉を紡ぐことが、こんなに怖いものだとは思いたくなくて。 だから烏は自ら男の昂りの上に腰を下ろした。 もう一刻も、我慢できない。 「…っ、そんなに締めるな、烏…っ。」 「あぁっ、きもちいぃ…っ」 烏は己の身体を動かし、孔で男を感じた。 己を穿つ男のそれは、そろそろ限界を訴えている。 「烏…っ。」 あぁ、熱い。 熱い飛沫が内にかかり、烏自身も解き放つ。 「……はぁ…っ」 「……また、呼ばなかったな。次も来るぞ。お前が俺を呼ぶまで、ずっとな。」 そう言ってぐったりとする烏の頬に冷たい口付けを残して、男は部屋から出ていった。 .
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