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泥で汚れたカッターシャツ、ひびの入った縁どりのある眼鏡、皮膚には所々に青あざがある少年が一人マンションの屋上にいる。
そこに吹く風は今でも気持ちよくて見晴らしもとても良い。
特に今の時刻の夕日はとても綺麗だった。
日向にとってはお気に入りの場所だ。
今の日向にとっては自分が惨めに思えて仕方なかった。
別に今日に限った話でない。
毎日毎日中学で虐められてよく今日まで耐えてきたと思う。
これもこれで終わらせる。
日向は一歩、また一歩と足を動かし柵に手をかける。
柵を跨ぎ、柵を越える。
目の前には地平線に消えようとしている夕日。目線を少し下げると日向の住む日陰市がある。
日向は深呼吸をして呼吸を整える。日向の飛び降りる準備のひとつだ。
入念に深呼吸をして、そして終える。
「・・・・・・よし」
膝を曲げ、跳躍する一歩手前で。
「何してるの?」
不意に可愛らしい声が聞え、跳躍を止めるのだが、脚は飛ぼうしていて変な勢いが発生していたのだ。
「うわあ!」
上半身はマンションを飛び出し今にも落ちようしてしまっている。
「あぶない!!」
声と共に足音が近づいてくるのが分かった。
そして日向の腕を掴んてきた。
「・・・・・・ッ!」
そして、日向の腕を引っ張っている。
「んーしょ!んーしょ!・・・・・・」
日向の姿勢が安定し、掴まれていた腕を離してくれた。
「大丈夫?」
声のほうを見てやるとそこには少女が一人いた。色素の薄い青い髪、同じ色をしたワンピースタイプの服にサンダルを履いている、夕日に負けないような真っ白な肌だった。
「ん・・・まぁ」
取り敢えず返事をする。
「こんなとこにいちゃダメでしょ」
「いいだろ。別に関係ない」
「ほら早くこっちに来て」
少女が手を伸ばしてくる。
「・・・・・・・・・」
日向は無言になってその場から動かない。
「ほらー」
少女は柵から身を乗り出して手を差し伸べてくる。
「・・・・・・・・・・・・」
少女の手を借りずに柵を越える。そそのまま屋上を出るために足を動かした。
「ちょっとーなにか喋ってよー」
「・・・・・・・・・」
無視して足を動かし続けた。
「ぴぎゃ!」
可愛らしい悲鳴をあげたみたいで日向は足を止めて確認した。
少女がずっこけてただけだった。
日向は気にすることもなくその場から去っていった。
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