第1章 トイレの花子さん

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二回目のため息をついたとき、後ろから春義は肩を叩かれた。 「またため息ついてるのか」 「なんだ、祐司(ひろし)か」 宮本祐司。春義とは同学年。 春義の友達で見た目、成績、運動神経は平凡。 類は友を呼ぶというのはこういうことだと思わされるぐらい二人は似ているのだ。 「坂本先輩か?」 祐司は坂本を見ながらお前も大変だなと笑っている。 「しょうがないだろ。恋は生理現象だよ。」 笑っている祐司に不快感を覚え、春義は少し歩くペースをあげる。 だがそんなことはお構い無しに祐司はペースを合わせる。 「だいたい恋する相手が悪いんだよ。」 確かにそうだ。 一瞬そう思ってしまった。 一瞬でもそんなことを思ってしまった自分と祐司に対して舌打ちをする。 叶わない恋だということは自分でもわかっているが、諦めたくないという思いが強すぎた。 そのぐらい好きになっているのだ。
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