第1話 眠りの迷宮

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目が覚めると、バスは川の土手に沿った道を走っていた 夜明け前の事である 対岸には工業地帯の灯りが見える 水面に映る様々な灯の煌めきが、その辺り一帯の明るさを更に際立たせている その一方で、見上げる空はまだ暗く、遥か彼方で星がそっと瞬いていた 車内は静かでエンジン音が低く鳴り響いてる以外は、何の音も聞こえて来ない いや、そのエンジンの響きすら、殆んど気にはならなかった 何て静かな国なんだろう… イェリスは改めて、そう思った それは、彼女がこの国にやって来て真っ先に抱いた印象であり、その思いは今も変わる事はない 静かな国に住む、静かな人々 そして記憶の中の… 静かな… 父 静かで優しい笑顔 遠くの空の星が、イェリスの瞳の中で滲み始めた
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