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目が覚めると、バスは川の土手に沿った道を走っていた
夜明け前の事である
対岸には工業地帯の灯りが見える
水面に映る様々な灯の煌めきが、その辺り一帯の明るさを更に際立たせている
その一方で、見上げる空はまだ暗く、遥か彼方で星がそっと瞬いていた
車内は静かでエンジン音が低く鳴り響いてる以外は、何の音も聞こえて来ない
いや、そのエンジンの響きすら、殆んど気にはならなかった
何て静かな国なんだろう…
イェリスは改めて、そう思った
それは、彼女がこの国にやって来て真っ先に抱いた印象であり、その思いは今も変わる事はない
静かな国に住む、静かな人々
そして記憶の中の…
静かな…
父
静かで優しい笑顔
遠くの空の星が、イェリスの瞳の中で滲み始めた
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