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ララが唐突にイェリスの視界から消えた。
我に返ったイェリスが辺りを見回すと、どうやら黄昏に紛れて気がつかなかっただけの様で、よく見ればララは立っていた場所の数メートル先を夕陽に向かって歩いていた。
「ララ、待って」イェリスが声をかけても、ララは見向きもしない
「おかあさん」イェリスの呼ぶ声が風の中に消えてゆく
繰り返し何度呼んでもララの手前で風が呑み込んでしまう。
イェリスは走った。
向かい風の中、息を止めて全力で走った。
しかし、ララの背中は遠い。
そして、ララの歩調は速く、走っても走っても追いつかない。
「待って、おかあさん」イェリスは叫んだ
このままではまた何処かへ行ってしまう。
「私を独りにしないで」イェリスのこの言葉が聞こえたのかどうかは定かでないが、ララは立ち止まった
風は止み辺りは俄に暗くなっていた。
イェリスはすぐに追いついて、ララの後ろに立ち肩で息をしている。
「おかあさ…」イェリスが声をかけようとしたその時、ララが徐に彼女の方へと振り返った
そして次の瞬間、イェリスは息を呑んだ。
えっ、何なの?
目の前のララが先ほどの美しいララと違うのだ。
目だ、目が違う!
イェリスは総毛立った。
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