松嶋家 玄関前

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 どうしたというのだろう。 菫は僕を離さない、泣き止まない。  どうしたらいいのだろう。 僕も菫を抱き止め、何故か泣いた。 思い出したんだ、菫のお母さんは身体が弱い、お父さんは忙しく家にあまり帰れなかった。 入退院を繰り返すお母さん。 菫は僕の家に泊まったり、婆ちゃんと二人、この立派な一軒家に暮らしていた。 だから、二人で居ることが多く、それが何時しか当たり前になっていたんだ。 「葉、っ、お母さん死んじゃったの! あたし残して居なくなっちゃったのっ! お父さんはすぐには帰れないって……っ!どうしたらいいの!?あたし、お母さんに親孝行する前にっ……!!!」 ただ、抱きしめて、聞いてあげるしか出来なかった僕は……なんて頼りなくて不甲斐ないのだろう。 涙は僕も菫も止まらなかった。
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