昔話

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「みい、着いたよ。」 「……う、んっ、」 「くすくす。凄く気持ち良さそうに眠ってたね。」 「……あ、ごめんなさい。」 「みいは何も悪くないんだから、謝らなくていいよ。」 せいちゃんは優しいから何も言わないけど、運転してくれている人を無視して眠るのはマナー違反だって分かってる。 蓮と結衣が一緒に乗っていても関係ない。 「……はあ。」 せいちゃんの運転する車は乗り心地が良くて、いつもすぐに眠くなってしまうから、今日は我慢しようって決めていたのに、大失敗してしまった。 車が動き出した瞬間から、景色を眺めている私の頭を蓮が撫で始めて、その優しい手つきと掌の温もりが眠気を誘って、瞼を閉じてしまった。 「……もう、最悪。蓮のせいだよ。」 「ん?美桜、どうした?まだ眠いのか?」 私が小さな声で呟いた非難の言葉は、飽きずに私の頭を撫で続けている蓮には届かなかったらしく、優しい眼差しで私を見つめてくる。 「……ううん、何でもない。」 「そうか。もう眠くないなら外に出るか?」 「うん。」 例え私が眠ってしまった原因が蓮の行動のせいだったとしても、抵抗せずに眠ってしまった私が悪いんだから、蓮を責めるのは間違ってるよね。 四人で居られる時は楽しく過ごしたいから、この話をするのは止めよう。
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