第1話

プロローグ

そこまで話したあと、私は慌てて彼(彼女？)を一瞥した。
ついつい懐かしい思い出に浸って警戒を緩めた自分を恥じた。この人物がいつどのような行動に出るか分かったものではないからだ。
しかし奴は黙ってこちらを見つめるばかりだ。
束の間の安堵に胸をおろしながらも、私は大殿筋に力を入れ直した。もし奴がダイレクトアタックを仕掛けてくるとしたらここしかない。
だがどうやら緊張で力みすぎてしまったらしい。小鳥がさえずるような可愛らしい放屁をしてしまった。空気が澄み渡るような錯覚を私は覚えた。