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「…やめとく。ごめん。」
そう言って、私は握られた手首を振りほどいた。
強く握っていたと思っていたハルキくんの手は、意外にもあっさりと離れて。
……もしかしたら、断られる事…分かっていたのかもしれない。
「…そうですか。」
残念ですね、なんて呟いてハルキくんはグラスに入っていたお酒を一気に煽る。
コト、と静かにグラスをテーブルに置き、しっとりと濡れている唇を指先で拭う。
…なんだか無駄にセクシーね…。
「今、速人の連絡先とかって知ってますか?」
「…まさか。」
知るわけないでしょ、と冗談めかしてそう返す。
大体…最後に連絡先を変えたのも、私の番号を着信拒否したのも…むこうだし。
もう、別れてから何年経つのだろうか。
今更友達伝いで忘れられなかったなんて言われても…本当に困る。
あの人は何年経っても私のことを振り回すのね。
「…藍さん。俺が言っても説得力ないでしょうけど…あいつはあなたの事嫌いになったからあんな別れ方したわけじゃないんですよ。あれは、」
「もういいよ、ハルキくん」
「……でも」
「もう何年も前に終わった事なの。あれから会った事も、連絡すらとってないんだから…。それにね、今、私……ちゃんと恋人がいるから。だからもう、その話は終わりにしていい?」
本当に私が困った顔をしていたのか、それともこれ以上話しても無駄だと思ったのか…ハルキくんはおとなしく引き下がってくれた。
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