貧乏から貧乏へ

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まだ夕刻だというのに、佐賀の町はもう真っ暗なのだ。 広島はスラム化しているとはいえ、都会である。 遅くまで店が開いてるので、夜道もそう暗くはない。 だからこそ、俺もかあちゃんの店まで行こうなどと思い立ったのである。 しかし、ここには赤提灯もない。行き交う人もない。 駅前に、申し訳程度に五、六軒を連ねているだけである。 教育上、どんなにいいのか知らないが、明日からこんな寂しいところで暮らすのかと思ったら、さっきまでの心細さに恐怖まで加わって、不安で不安でたまらなくなった。 しかも、おばちゃんはその真っ暗な道を、川の上手沿いに、さらに暗い方へと、どこまでも、どこまでも、ずんずん歩いて行く。  多分、四十分くらぃだったのだと思うが、幼い俺にはその時間は永遠のように思われた。  季節は秋で、川原にはススキが生えていて、それがまたなんともわびしかった。
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