貧乏から貧乏へ

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その時、俺の頭の中は真っ白になっていた。  こんなボロ家に住んでいるばあちゃんというものを想像するだに、恐ろしかったのだ。  何しろ、山姥か何かが、住んでいるような家だったのだから。 「おかあさん、今、着ましたよ」  おばちゃんが、玄関の戸をガラリと開けてそう言うと、奥から、意外にも背の高い色白の、すらっとした上品なおばあさんが現れた。  これには正直言って、ちょっと拍子抜けした。 「昭広ちゃん、あんたのばあちゃんよ」  おばあちゃんが、俺とばあちゃんの間に立って言う。  そして、呆然としている俺に向かって笑顔でこう付け加えた。 「小さい時、会ったことあるのよ。覚えてる?」  おばちゃんとしても、精一杯の言葉だったのだろうが、その時でも十分小さい俺が、覚えているわけはなかった。
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