夜語り

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「犬が喧嘩しとるんかと思ったんよ」 最初に二人を発見した子供たちの証言である。 ―――― それは昭和30年頃――時は高度成長期にさしかかろうとしている時代。 日本が最も活気のある、明るい時代に私が体験した――哀しくも不可思議な話である。 当時、私は小さな山間の村で開業医を営んでいた。 その私のところに二人の男女が運ばれてきたのだ。 遺体となって――。 「先生、見立てはやはり……心中ですか?」 年老いた駐在員が私の顔を伺うようにそう聞いてきた。 「多分……ね」 短く答えると、駐在員がため息を吐いた。 「なんでまた……。こんなに若いっちゅうのにね……」 どうにもやるせない空気が漂う。 若いからこそ……こんな選択肢しか思いつかなかったのかもしれない。 そう思いながら、私もため息を吐いた。
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