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落ち着け?これが落ち着いていられるか。彼女に見つかったらおしまいだ。それなのに、なぜ三原は落ち着いていられるのだ。こうしている間にも、僕たちの姿は彼女に認識されてしまうかもしれないのだ。
横目で駅の方を見ると、女子生徒と目があった気がした。そして彼女は駅からまっすぐ、こちらに向かってきている。一歩ずつ、彼女が足を運ぶたびに距離は短くなる。心臓の音が外にも聞こえそうなくらい大きくなって、口から出てしまいそうだ。
もう、ダメだ。顔を見られる。僕は目をつぶって、下をむいた。
「よし、できた」
三原は書き終わった手紙を乱暴に封筒に入れて、僕に突きつけた。そして、自分のバッグをたぐりよせて、駅の方に体を向けた。
「そっちは……」
「いいから、あんたはそれ持って公園から離れたポストに入れて。こっちは私がなんとかする」
そう言って三原は、女子生徒の方に歩いていった。僕は三原に言われるままに、駅に背を向けて公園を出た。
怖くて、後ろを振り返ることはできなかった。
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