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 帰りの電車は人が少なく、まるで貸し切りのように自由に座れたが、ドアの近くの隅っこに立った。車窓からは赤く染まった西日が山の間から顔をだしているのが見えた。それは電車が動くにつれて位置がかわり、山に隠れて見えなくなった。  あの後、一度公園に戻った。もしかしたら三原がいるのではないかとおもったが、いなかった。ひとりで帰っていいものか悩んで、少しの間公園のベンチに腰掛けた。左の胸を触ると、まだ鼓動が大きくなっているのがわかった。  僕は今まで人目をさけて生きていた。なるべく目立たないように、注目されることのないように、ひっそりと隅に自分を追いやっていた。そうすれば、緊張することもなく鼓動が大きくなることもない。誰からも苦にされない、平穏でいられる。  会長はこのことを言っていたのだ。シマウマの楽園からサバンナへといけば、この緊張感がつねに付きまとうのだと。 「……帰ろう」  僕は小さく呟いて、駅にむかった。
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