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太陽がさんさんと輝く。
今日は、いやに暑い。
「ふーっ」
男はくわを土に軽く差し、息をついた。
歳はもうすぐ還暦だというのに、彼の体つきは衰えを感じさせない。
だが、彼自身はずいぶん歳を取ったと感じていた。
何故なら、麦わら帽子から覗く自慢の長い黒髪が、今や真っ白だからだ。
彼は首にかけたタオルで汗を拭う。
「今日はこんなもんか」
男は畑仕事をおえると、日陰の中にある椅子に腰掛けた。
陽射しが強いせいで、日陰の色も濃い。
彼は荷物の中から水筒からを出し、一気に飲んだ。
体が潤されていく感覚。
男はほっと息をつくと、胸ポケットからシガーケースを取り出す。
出てきたのは、煙草ではなく葉巻。
葉巻は保存が割と面倒なので、大雑把なこの男には向かないのだが、香りが好きでどうしてもやめられないのだ。
シガーパンチで葉巻を切り、マッチで火をつける。
一口目……これが一番旨い。
男は煙を吐き出すと、傍らにあった新聞に手を伸ばす。
一つ一つの記事に目を通していくと、ある記事に目が止まった。
それは『ウィリアム海賊団が、他の海賊団と派手に争った』という内容だった。
その記事を見て、彼はにやりと笑った。
「まーたやらかしたな。ロン」
そう呟く彼は、どこか嬉しそうに見えた。
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