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だが、彼女はまだ男の名前を知らなかった。
「はい、いただいてます。あ、あの……」
「あぁ、ごめんごめん。俺、まだ名乗ってなかったね」
ジュリアが困った顔をすると、彼はすぐに察して彼女の前に座り込み、爽やかな笑顔を見せた。
「俺はキール。キール・ネルヴァ」
そう言って、右手を差し出す。
ジュリアも彼の手を取り、握手する。
だが、ジュリアが手を離そうとすると、キールは彼女の手を強く握り直した。
目を丸くするジュリアの顔を、彼は覗き込む。
「二十七歳、独身、彼女なし。『ちゃらい』って言われるけど、結構一途なんだよ? 好きなタイプは髪の長い、笑顔のかわいい子。そう、ジュリアちゃんみたいな――」
「やめろ」
その時、後ろからロンが現れ、キールの頭を拳骨で殴った。
ガンと鈍い音。
キールはうずくまり、泣きそうな声で叫ぶ。
「いってー!キャプテン、ひーどーいー!」
「ひどくない。女と見たら、誰でも彼でも口説くのやめろ」
冷たく突き返すロンに、キールは反論した。
「誰でもじゃないッスよ!俺が口説くのは、かわいい女の子限定です!」
「じゃあ、てめぇの目は節穴だ」
――それって、私はかわいい女の子じゃない、ってこと!?
ジュリアは思わずロンを睨みつける。
だが、ロンはそんなこと位にも介さず、言った。
「お前は、うちの幹部なんだ。もうちょっとマシな自己紹介をしろ」
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