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「幹部?」
ジュリアが首を傾げると、ロンはバツが悪そうに答えた。
「あぁ、キールはうちの幹部の一人だ」
「そうなんだよ」
いつの間に元気を取り戻したのか、キールがまたジュリアの前に進み出る。
彼は、自慢げに自分を指差す。
「そして、俺がこの船の船医でもある。体調が悪くなったら、いつでも俺に相談してよ?」
「お医者さんなんですか?」
彼女は、つい聞き返していた。
二十七歳という年齢。そして、今までの医者らしからぬ言動。
彼が優秀そうに見えるかと聞かれれば、それはNOだ。
「あ、信用してないね」
キールがふてくされて、ずいっと彼女に顔を近づける。
ジュリアが慌てた様子を見せると、彼はにこりと微笑んだ。
「大丈夫。俺、腕は確かだから、安心して」
その笑顔があまりに素直なものだったから、彼女は思わず頷いていた。
するとそれを見て、彼も安心したように笑った。
「……でも、俺でも治せない病気があるんだ」
キールは先ほどの表情を一変させ、神妙な顔で述べる。
そして、ジュリアの手をがっちりと掴んだ。
「それは『恋の病』!ジュリアちゃん、俺は君に捕らわれてしまった!さあ、この俺を開放して――」
「いい加減にしろ」
ロンがまた、問答無用で殴った。
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