拾∥夏の梢

3/16
前へ
/275ページ
次へ
世の中にはな、禁じられた術が複数存在する。この刀もそういう術で生み出されたもんや。どんな思いがあったにせよ、強い思いがあったからこそ力を持った。 ただなぁ、暴走してもうたんやろうな。 この刀を――元となった刀やけどな、それを打った刀鍛冶には嫁がおったんや。紺色の髪と青い瞳を持った美しい娘やったって。 でも、死んでしもた。 病でな。 その刀鍛冶はな、呪術やら陰陽術に多少の覚えがあった。悲しみに暮れた刀鍛冶の男は禁術に触れたんや。 『反魂の術』 蘇りの術…………刀を媒体にして嫁を生き返らそう、また一緒に暮らそう、そう思ってのことやった。たったそれだけのことやった。でも、男は代償を払うことを忘れていた。人一人を生き返らすんにはなぁ、それなりのもんを払わなあかん。せやけど、男の実力やとな魂を対価として払わなあかんかった。 おかしな話やでな。 一緒にいたいと願って禁術を使っておきながら、一緒におられんのやから。だから、忘れることにした。
/275ページ

最初のコメントを投稿しよう!

230人が本棚に入れています
本棚に追加