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後悔は、あるかもしれない。
彼女はこれを望まないかもしれない。
否、望まないだろう。
怒るだろうな。
きっとそうだろうな。
それでも、やるのか?
やる、のだろうな。
春は懐から呪具の玉を取り出した。桃魔が渡してきた衣の間に忍ばされていたものだ。赤い紐の着いた黒く濁った色をした掌で包めるほどの大きさの玉。これは、死者の魂を呼び出す神宝・死返玉(マカルカエシノタマ)だ。十種神宝のうちの一つで、鷹明が厳重に管理しているはずの物。
禁術を勧めたのはどうやら彼のようだ。
陰陽頭が弟子にそんなことをしていいものか…………。
春は苦笑した。
そして、印を結んだ。
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