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「これは、俺の人生最初の我が儘だ。だから、言うことを聞いてもらう………………ほら、もうすぐ元服だろ?正式に元服したら、脇差しだけじゃあ腰が物足りない。俺も、自分の愛刀がほしくてね」
春は彼女の手の中にある刀を指差した。彼女はそれを、元々白い指先が更に白くなるくらいに強く、強く握りしめた。例えようのない感情が大波となって押し寄せ、涙の瓶が溢れて中身がこぼれ落ちた。
『………………後悔は』
「少しだけ…………」
一拍。
春は目を瞑り、一度、呼吸を整えた。深く息を吸う。
「我が名は陰月、字は…………春堯。我が式として下れ『夏梢(カショウ)』!」
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