匣入り上手

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匣入り上手

「気分はどうだい」と声が聞こえた 聞こえたけれど、僕は気付かないふりをして眠る 詰まらないなあ 深夜聞こえる救急車のサイレンに舌打ちしてみた でもなにか違う気がして 僕は垂れ流し続けていたテレビの悲鳴に耳を洗う 安寧を願うのは、そんなに高尚なことかなあ 好き嫌いの多いクラスメイトにいい顔してる 好きと嫌いがごちゃ混ぜになった話を聴いてた きっと、みんな一瞬で忘れるのだろう 死んじゃえばいいのに なんて考えたりして 僕は電車の中でありふれた歌に耳を洗う 音量を最大にしてわざとイヤホンをゆるめてみた でも、なにか違うんだよ 誰も僕に気付かない 怖くなって、音を止めれなくなってしまった 『誰か気付いてよ』 騒乱を求めるのは、そんなに悪いことなの?
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