ギミックベール

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かわいらしい金魚を見ていた 狭い器がかわいそうだと勝手に嘆いて 海に放して良いことをした気分 掬い上げても、もう救えない 友達が持っている玩具が羨ましくて 父親に泣いてねだって 誕生日にやっと貰ったのに 「やっぱり要らない」って そんなふうに僕らはいつだって なんの悪気もなく何かを壊すんだ 毎日少しずつ描いていた似顔絵に 完成間際に火をつけるように なんの意味もなくなんの意義もなく 道路脇に供えられた花束 車線に転がったままの猫の死骸 靴箱に眠るラブレター 落書きされた机 踏み荒らされた花壇 救急車のサイレン 星空に混じる飛行機の光り 泣きながら喜ぶ人々 血塗れで笑っている誰か 確かに綺麗な世界だけれど 少しずつ少しずつ何処かが歪んでいて でもだからこそ綺麗で 間違いないながらも真っ直ぐで 目を瞑ったところで何も変わらない 駄目だって決められているから駄目で 「いいよ」って許されたら 誰もが誰かを殺してしまうんだろうな 悲しいくらい簡単に 僕らは好きにも嫌いにもなれるんだ
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