『いいよ』と、答えた。

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お兄ちゃんたち三人はわたしたちの二つ年上の三年生ですごくモテる。 頭が良くてスポーツ万能で学校ではちょっとした有名人。 「ホテルに置いてあったゴムに穴が空いてたみたいで…まさか…」 涙を溢して震える小さな背中。 半泣きになる順子を風に晒さないように抱き締めて産婦人科を出た。 『堕胎するのであればこの紙に子供の父親の署名をしてもらって受け付けに出してくださいね』 看護師に渡された紙を鞄にしまい、 ―――どうしよう。 順子が小さく呟いて… わたしもどうしていいのかわからずにただ順子の手を握りかえした。 もう3ヶ月だって。 先生の言ったタイムリミットはもうすぐ。 ―――どうしよう。 どうしたらいい? 何にも考えられなくなってわたしは順子の手をしっかり握ったまま… どうしたらいいのか何にも頭に浮かばないままわたしは途方に暮れて秋の空を見上げた。 10月の空はきれいな緋色でとても切なかった―――
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