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一瞬、ふわりと微笑んだ。
―――ように、見えた。
同じ目線。おそらく、同じ身長。
あの微笑みは、どんな意味があるんだ。
俺に見られて、照れ隠し?まさか。
「こんなに背高いと、目立っちゃうよね。」とか?
…いや、そもそも、本当に微笑んだのか?
本当に?
「おい、涼介、降りねぇの?」
和哉に肩を叩かれ、考え事をしていた俺がはっと我に
返った時には、既に彼女の姿はどこにも見えなくなって
いた。
「…あ…。」
思わず周囲を見回し、今のは夢だったんじゃないかと
思い始めていると、耳元で、
「さっきのヒト、やたらデカかったな。
お前と同じくらいあったんじゃね?」
と囁かれた。
…やっぱり、夢じゃない。
じゃ、あの微笑みも?いや、でもあれは…。
頭の中で、さっきのヒトの事をぐるぐると考えながら
電車を降りると、
「お前、一目惚れか?…確かに、身長はともかく、
綺麗なヒトだったもんな――――。な?」
と、和哉がカバンで背中を思いっきり殴ってきた。
不意打ちされた俺は、もちろん身構えることもできず、
殴られた弾みで2,3歩よろけて知らないおじさんに
ぶつかってしまった。
「あ、スミマセン…。」
そんな俺を見て、和哉はニシシ、と笑っている。
…くそ、覚えてろよ。
内心毒づきつつも、俺は頭の片隅で、彼女の事を
考え続けていた。
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