出逢いは、突然。

5/8
前へ
/136ページ
次へ
数分後。 和哉と俺は、乗車率150%の電車に揺られていた。 俗に言う、電車通学。 雑誌やマンガでよく見る、電車内での運命の出会い なんてモノには全く縁もなく。 ただひたすら毎日、同じ時刻の電車に乗り、高校へ通う。 「なぁ、涼介。」 両手で吊革につかまり、体重の殆どを預けて立っている 和哉が、おもむろに口を開く。 「…なんだよ。」 「俺らさぁ、いっつもこの時間の電車じゃん。 学校に着くの、早すぎんだよね。 別に部活の朝練に行ってるわけじゃないんだし、もう2本くらい後のに変えてもよくね?」 そうなのだ。 俺は、通学するには多少早い時間の電車を、あえて選んでいる。 が、決して電車の本数が少ないからではない。 通学で使っているこのローカル線は、15分おきにダイヤが組まれている。 どの部にも所属していない俺たちは、もちろん朝練なんて当然あるわけがない。 だから、時間的な事だけを考えれば、和哉の言うとおり2本分くらい遅くしても、遅刻の心配は全くない。 いやむしろ、いつもの時間の方が学校へ着くのが早すぎて、時間を持て余すほどだ。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加