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”次はぁ、終点―――終点です。お乗り換えのご案内を…”
そうこうしているうちに、電車はスピードを落とし、
終点駅のホームへと滑り込む。
キッというブレーキ音と共に停車したところで、俺は
つかまっていた吊り革から手を離し、ドアの方へ180度
向きを変えた。
瞬間。
ぎょっとした。
人ひとり挟んだ正面に、そのヒトは立っていた。
栗色の、柔かそうなウェーブがかった髪と、半ば伏せた
瞳の睫毛の長さがとても印象的で。
さらに驚いたのは、彼女が、俺と彼女を隔てている人の
頭越しに俺の視界に映っている事だった。
身長180センチ強の俺が視線を下げる事なく顔を見ることの
できる女性なんて。
ましてや、他人の頭越しに、完全に顔が見える状態の女性
なんて今まで皆無だった。なのに。
どういうことだ。
そういうことか?
つまり、俺と目線が同じってことだ。
…そんな女性、いたんだ。
あまりの衝撃で、目を離せずにいる俺の視線に気付いたのか、彼女はふとこちらを向いて。
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