dark moon

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「俺だって、朝比奈のこと、傷つけたかったわけじゃないし、むしろ、その逆だし、でも、結果的にそれが、朝比奈を傷つけ、ちゃって、でもっ、俺、自分でも気づかないくらい、鈍感、みたいでっ、でもっ!そんなの言い訳って、分かってるんだけど、でもっ……!!」 「東雲、落ち着いて」 “落ち着いて”は、いつも俺が朝比奈に言う側だったのに。まさか言われるときが来るなんて……。でも、自分でもテンパってることは分かった。なんて言えば朝比奈に俺の言いたいことが伝わるんだろうって考えたら、訳わかんなくなって、収拾つかなくなってる。 何度も何度も手の甲で涙を拭う俺に、朝比奈はポンポンって軽く頭を叩いた。 「東雲の言いたいことは、十分伝わってるから、大丈夫だよ。ありがとう」 「……ほんとに?」 「うん」 朝比奈の顔は涙で滲んでいたけど、微笑んでいるのはなんとなく分かった。 「好きになった相手が東雲で良かった。フツー、男に、しかも、友達に告白されたらドン引きするもんだよ?それが、気づかなくてごめんって泣きながら謝られるとか……俺、超幸せじゃん」 「朝比奈……」 「東雲は何にも悪くないんだよ。鈍感なところもある意味東雲の良いところだし、もしも敏感だったらきっと今頃俺の気持ちに気づいて気まずい思いしてただろうし……鈍感すぎるから俺も堂々と片想い出来てたワケだし、ね。正直に言って欲しいんだけどさ、東雲は俺のこと、どう思ってる?本当、正直に言って」 「俺は、朝比奈のこと好きだよ。大好き。気持ち悪いとか、友達やめたいとか、そんなことは全然思ってない。だけど、さっきみたいなことは朝比奈とは、出来ないし、したく、ない。だって、大事な友達だから。朝比奈とはこれからもずっと友達でいたいから、今まで通りの距離感でいたい。これが、俺の正直な気持ち」 朝比奈さえ良ければ俺は今までと同じ生活を送りたい。でもそれって、エゴなのかな。俺のわがままなのかな? 朝比奈はどんな答えをくれるだろう。不安そうに顔を見たら、朝比奈はコクコクって何度も頷いていた。
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